EDM制作に使える無料VSTプラグインは、まず「Vital(シンセ)」「Valhalla Supermassive(リバーブ/ディレイ)」「TDR Nova(ダイナミックEQ)」「Voxengo SPAN(アナライザー)」「OTT(マルチバンドコンプ)」の5本をそろえれば十分です。生楽器系の音色が欲しいなら、旧Spitfire LABSの後継である「Splice INSTRUMENT」を足しましょう。

この記事では、EDMプロデューサーの視点で選んだ無料プラグインを、公式ダウンロードページで確認した対応OS・プラグイン形式と一緒に紹介します。どれも製品版の体験版ではなく、期限なしで使える無料版です。

この記事でわかること

  • EDM制作で本当に使える無料VSTプラグイン9本と、その役割
  • 各プラグインの対応OS(Windows/Mac)とプラグイン形式(VST3・AU・AAXなど)
  • 安全なダウンロード方法と、FL Studioへの読み込み手順
  • 2025〜2026年の変化(Spitfire LABS → Splice INSTRUMENT など)

無料VSTプラグインおすすめ一覧【2026年版】

結論として、下の表の9本があれば、シンセ・空間系・EQ・コンプ・メーターまで無料でひと通りそろいます。対応形式は2026年10月に各社の公式ページで確認した内容です。アップデートで変わることがあるので、インストール前に公式ページも見てください。

プラグイン種類WindowsMac主な形式
Vital(Basic)ウェーブテーブルシンセ○(Windows 10以降)○(macOS 10.15以降、Intel/Apple Silicon)VST/VST3・AU・スタンドアロンほか(Linuxにも対応)
Splice INSTRUMENT(旧LABS)サンプル音源○○VST3・AU・AAX・スタンドアロン
Valhalla Supermassiveリバーブ/ディレイ○○(Intel/Apple Silicon)VST2・VST3・AU・AAX
TDR NovaダイナミックEQ○(Windows 7以降)○(macOS 10.9以降)VST2・VST3・AU・AAX
Voxengo SPANスペクトラムアナライザー○○VST・VST3・AU・AAX
OTT(Xfer Records)マルチバンドコンプ○○(Apple Siliconネイティブ対応)VST・VST3・AU・AAX
Surge XTハイブリッドシンセ○(Windows 7以降)○(Intel/Apple Silicon)VST3・AU(Mac)・CLAP(Linuxは LV2も)
Kilohearts Essentials小型エフェクト集○○公式の動作環境ページで確認
Youlean Loudness Meter 2(Free)ラウドネスメーター○○VST2・VST3・AU・AAX・スタンドアロン

FL Studio はWindows版・Mac版ともにVST3を読み込めます。Logic Pro を使う場合はAU、Pro Tools を使う場合はAAXの有無を確認してください。

この記事の手順は FL Studio Template Pro に設定済みです。 詳細を見る →

シンセ:VitalとSurge XTで「音作り」は無料で完結する

EDMのリードやベースを作るシンセは、無料のVitalで十分に戦えます。有料シンセとの差は「エンジンの性能」よりも「付属プリセットの量」です。

Vital(Vital Audio)

Vitalは、Serumと同じウェーブテーブル方式のシンセです。無料のBasicプランでもシンセの機能はすべて使え、プリセット75種とウェーブテーブル25種が付属します。有料のPlus/Pro/サブスクリプションで増えるのは、主にプリセットやウェーブテーブルなどのコンテンツです。

  • EDMでの使いどころ:Supersaw、Reese Bass、Growl、Pluck、Pad など、ほぼすべて
  • 対応OS:Windows 10以降/macOS 10.15以降(Intel・Apple Silicon)/Ubuntu 18.04以降。64bitのみで、OpenGL 3以上が必要です。
  • 入手先:vital.audio(公式)でアカウントを作り、Basicを選んでダウンロードします。

波形の倍音を直接いじる「スペクトラル・ワープ」や、ドラッグ&ドロップでのモジュレーション設定など、操作も直感的です。具体的な音作りの手順はVitalの使い方:無料シンセでEDMの定番サウンドを作るで解説しています。

Surge XT(Surge Synth Team)

Surge XTは、オープンソースで開発されている無料のシンセです。ウェーブテーブル、FM、減算方式などを1台で扱えます。公式サイトで確認した最新版は1.3.4です。

  • 対応形式:Windows は VST3/CLAP、Mac は VST3/AU/CLAP(ユニバーサルバイナリ)、Linux は VST3/CLAP/LV2
  • 入手先:Surge Synthesizer 公式サイト

Vitalより画面は地味ですが、エフェクトやフィルターの種類が多く、2台目のシンセとして便利です。

音源:Spitfire LABSは「Splice INSTRUMENT」に移行

ピアノ、ストリングス、アンビエント系の質感が欲しいときの定番だった Spitfire LABS は、現在は Splice INSTRUMENT が受け皿になっています。

Splice は2025年4月に Spitfire Audio の買収を発表しました。その後、LABS と Originals のシリーズは Splice INSTRUMENT の中で使える形になっています(Splice公式ヘルプより)。

  • 料金:INSTRUMENT 自体は無料でダウンロードして使えます。毎月「Free Drops」として無料コンテンツが追加されます。プレミアムプリセットを無制限に使うには、INSTRUMENTプランか Splice の Creator/Creator+ プランが必要です。
  • 対応形式:VST3/AU/AAXのプラグインと、スタンドアロンアプリ
  • 旧LABSの扱い:INSTRUMENT を初めて開くと、インストール済みのLABSコンテンツが自動で読み込まれます。既存のプロジェクトはLABSプラグインのまま開けますが、INSTRUMENT へ自動で置き換わることはありません。
  • 入手先:splice.com/instrument(Spliceの無料アカウントが必要)

LABSで作った昔のプロジェクトを開く予定があるなら、LABSプラグインはすぐに消さずに残しておくのが安全です。SpliceのサンプルやプランについてはSpliceの使い方・料金プラン・商用利用・解約方法にまとめています。

空間系:Valhalla Supermassiveは「巨大な空間」を作る定番

EDMのブレイクやイントロで使う、長く広がるリバーブやディレイは Valhalla Supermassive 1本でまかなえます。

Valhalla DSP が無料で配布しているリバーブ/ディレイで、バージョン5.0では新モード「Sirius」が追加されました。登録なしでダウンロードできます。

使い方のコツは、トラックに直接挿さずにセンドトラック(FL Studio ならミキサーの空きトラック)に挿すことです。Mixを100%にして、送る量で深さを調整します。さらにリバーブの後ろにEQを置き、200Hz以下を削ると低域が濁りません。リバーブの基本はリバーブの使い方やコツ、ディレイはディレイの使い方やコツで解説しています。

EQ・コンプ:TDR NovaとOTTでミックスの悩みを減らす

EQとコンプは、DAW付属のもので基本は足ります。ただし「特定の帯域だけ、鳴ったときだけ抑えたい」場面では、無料のダイナミックEQが役に立ちます。

TDR Nova(Tokyo Dawn Labs)

TDR Nova は、4つのバンドそれぞれにダイナミクス(コンプのような動き)を持たせられるパラメトリックEQです。ハイパス/ローパス、スペクトラムアナライザーも付いています。公式ページで確認した最新版は2.2.2です。

EDMでは、ボーカルの耳に痛い帯域(2〜5kHz付近)を鳴ったときだけ抑える、キックが鳴る瞬間だけベースの低域を下げる、といった使い方が便利です。後者はサイドチェーン入力を使います。考え方はサイドチェーンとは?も参考にしてください。上位版の「Gentleman’s Edition(GE)」はバンド数やダイナミクス処理が強化されています。

OTT(Xfer Records)

OTT は、Serum の開発元 Xfer Records が無料で配布している3バンドのマルチバンドコンプです。小さい音を持ち上げつつ大きい音を抑えるため、シンセやドラムが一気に「EDMらしい派手さ」になります。

  • 対応形式:Mac 版は VST・AU・AAX(バージョン1.31でARMネイティブ対応)、Windows 版は VST3・VST・AAX。公式サイトの最新版は1.37です。
  • 入手先:Xfer Records 公式 Freeware ページ(非公式の配布サイトからは落とさない)

よくある失敗は、Depth を100%のまま使って音がつぶれ、ノイズまで持ち上がることです。まずは Depth を20〜40%程度にして、効き具合を耳で確かめるのがおすすめです。コンプ全般の基本はコンプレッサーの使い方やコツ、EQはEQの使い方やコツをどうぞ。

Kilohearts Essentials

Kilohearts Essentials は、ディストーション、ステレオ、フィルター、ゲートなど小さなエフェクトをまとめた無料バンドルです。公式ページでは「Free with an account」とされ、Kiloheartsのアカウント登録で入手できます。

  • 入手先:Kilohearts 公式 Essentials ページ
  • 対応形式:製品ページから「System requirements」で確認してください(本記事執筆時点で製品ページ上に形式の記載がなかったため)。

メーター:SPANとYouleanで「目で見て確認」する

ヘッドホンだけでミックスしていると、低域の量や音圧を耳だけで判断するのは難しいです。無料のアナライザーとラウドネスメーターを入れておくと、迷いが減ります。

Voxengo SPAN

SPAN は定番の無料スペクトラムアナライザーです。周波数分布に加えて、相関メーター、EBU R128 や K-system のメーター、トゥルーピーク表示も備えています。公式サイトの配布ファイルはバージョン3.24です。

リファレンス曲とキックやベースの帯域を見比べるのが、いちばん効果的な使い方です。詳しくはアナライザーの使い方・おすすめプラグインで解説しています。

Youlean Loudness Meter 2(Free)

Youlean Loudness Meter 2 は、LUFS(ラウドネスの単位)やトゥルーピークを測れるメーターです。無料版は期限なしで使え、短期・統合ラウドネスやラウドネスの推移グラフを表示できます。ストリーミング向けプリセットなどは有料のPRO版の機能です。

  • 対応OS/形式:Windows/Mac、スタンドアロン・VST2・VST3・AU・AAX
  • 入手先:Youlean 公式ページ

マスタリングの最後にマスタートラックの一番後ろへ挿して、数値を確認するために使います。手順はマスタリングを6手順で解説を参考にしてください。

無料VSTのダウンロード・インストール手順(FL Studio の場合)

無料プラグインは、必ず開発元の公式サイトから入手してください。非公式の配布サイトには、改ざんされたインストーラーや古いバージョンが置かれていることがあります。

  1. この記事の「入手先」リンクから公式ページを開き、自分のOS用のインストーラーをダウンロードします(アカウント登録が必要なものもあります)。
  2. インストーラーを実行します。Windowsでは、VST3の保存先は通常「C:\Program Files\Common Files\VST3」です。特別な理由がなければ初期設定のままにします。
  3. FL Studio を起動し、メニューの「OPTIONS」→「Manage plugins」を開きます。
  4. 「Find installed plugins」(プラグインの検索)を実行し、新しいプラグインにチェックを入れて「お気に入り」に追加します。
  5. チャンネルラックの「+」(シンセ)や、ミキサーのエフェクトスロット(エフェクト)から呼び出せるか確認します。

Macの場合、AUは「/Library/Audio/Plug-Ins/Components」、VST3は「/Library/Audio/Plug-Ins/VST3」に入るのが一般的です。FL Studio の基本操作はFL Studioの使い方で確認できます。

無料プラグインを使いこなすコツ

無料プラグインで成果を出すコツは、数を増やすことではなく「役割ごとに1本に絞って使い込む」ことです。

  • 役割を決める:シンセはVital、リバーブはSupermassive、メーターはSPAN、のように固定すると、設定の勘所が早く身につきます。
  • DAW付属と比べる:FL Studio には Fruity Parametric EQ 2 や Fruity Limiter など優秀な付属プラグインがあります。無料VSTは「付属品にない機能」を補うつもりで足すと迷いません(例:Parametric EQ2の使い方)。
  • CPU負荷に注意:Vital や Supermassive を何本も挿すと重くなります。音が決まったらオーディオに書き出す(フリーズ/レンダリング)習慣をつけましょう。
  • プリセットを分解する:付属プリセットを開き、どのツマミが効いているかを1つずつ戻して確かめると、音作りの理解が早く進みます。

有料プラグインが必要になるのは、「無料版で不満な点が具体的に言える」ようになってからで遅くありません。有料のおすすめはおすすめのVSTプラグイン【Instrument編】と【Effect編】、シンセ全般はおすすめのシンセサイザー音源で紹介しています。

よくある質問

無料VSTで作った曲を商用リリースしても大丈夫ですか?

プラグインで作った音を自分の曲に使ってリリースすることは、一般的には問題ありません。ただし、付属プリセットやサンプルの扱いは製品ごとの利用規約で決まります。特にサンプル音源(Splice INSTRUMENT など)は、素材そのものの再配布が禁止されているのが一般的なので、各社の規約を確認してください。

Apple Silicon(M1〜M5)のMacでも使えますか?

この記事で紹介したプラグインのうち、Vital、Valhalla Supermassive、OTT、Surge XT は公式にApple Silicon対応を明記しています。そのほかは公式ページの動作環境を確認してください。古いバージョンを使っている場合は、最新版に入れ替えると動作が安定することがあります。

Spitfire LABS はもう使えないのですか?

インストール済みのLABSで作った既存プロジェクトは、LABSプラグインのまま開けると Splice の公式ヘルプに書かれています。新しく使い始めるなら、LABSのコンテンツも入っている Splice INSTRUMENT を入れるのがおすすめです。

無料VSTだけでプロ並みの曲は作れますか?

道具の面では十分可能です。差がつくのは、アレンジやミックスの判断です。EDMのmixのやり方やドロップの作り方もあわせて読んでみてください。

まとめ

  • EDMの無料VSTは、Vital・Supermassive・TDR Nova・SPAN・OTTの5本が基本セット
  • Spitfire LABS は Splice INSTRUMENT に移行。既存のLABSプロジェクトはそのまま開ける
  • ダウンロードは必ず公式サイトから。役割ごとに1本に絞って使い込むのが上達の近道

次に読むなら、Vitalで定番サウンドを作るVitalの使い方、無料のサンプルを集める無料サンプルパックのリストがおすすめです。プラグインはそろったけれど「曲の形にならない」という人は、プロのプロジェクト構成をそのまま開ける FL Studio テンプレートも参考にしてください。

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カテゴリー: プラグイン