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曲を完成させても、「市販の曲と比べたら音がショボい!」と感じること、ありますよね。原因の多くはミックス(音のバランス調整)にあります。この記事では、ミックスの基本知識、必要な道具、実際の手順、EDM特有のテクニックを順番に解説します。読み終わるころには、自分の曲をどこから直せばいいかがはっきりするはずです。
この記事でわかること
- ミックスとマスタリングの違いと、ミックスをするタイミング
- ミックスに必要な13種類のエフェクトと重要度
- Drum → Bass → その他の順で進める、実践的なミックス手順
- Sidechain Reverb や Pre Clap など、EDMらしさを出すテクニック
《入門編》EDMミックスの基本
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ミックスとは、各トラックの音量・周波数・定位・質感を整えて、曲全体を聴きやすくする作業です。まずは言葉の意味と、作業のタイミングを押さえましょう。
1. そもそもミックスって何?
「ミックス」や「ミキシング」は、基本的に「音のバランスを整える」ことを意味します。たとえばKickやシンセだけが大きすぎないように音量を下げる、低音が足りないので100Hz付近を持ち上げる、といった作業です。
ただし実際のミックスはそれだけではありません。次のような作業も含まれます。
- 音の質感のクオリティを上げる(サチュレーションなど)
- サイドチェーンやボコーダーなど、特殊効果をつける
- 空間(リバーブ・ディレイ)と左右の広がりを作る
2. マスタリングとは何が違うの?
マスタリングとは、簡単に言うと「最終仕上げ」のことです。配信サービス向けに音圧を整えたり、ステレオ感やアナログ感を足したりします。ミックスが「トラックごとのバランスを整える作業」なのに対し、マスタリングは「完成した2ミックス全体を磨く作業」です。
マスタリングの具体的な手順は「プロが行うマスタリングを6手順で解説」で紹介しています。
3. ミックスってどのタイミングでやるの?
ミックスのタイミングは、基本的に次の3回です。
- 新しいInstrumentを追加した時の、エフェクト作業
- 曲を作りながら、音量のバランスを整える作業
- 曲全体のアレンジメントが終わった時の、細かい仕上げ作業
「最後にまとめてやる」のではなく、作曲と並行して少しずつ整えていくのがコツです。次に、ミックスに必要な道具(エフェクトプラグイン)を紹介します。
《準備編》EDMのミックスに必要な知識と道具
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ミックスに使うツールは13種類あり、まず覚えるべきなのはボリュームフェーダー・Pan・EQ・コンプレッサーの4つです。重要度を★で示しながら紹介します。
- ★★★=ミックスに最低限必要な知識。これがうまくいくと、曲は圧倒的に聴きやすくなる。
- ★★☆=さらに曲の質を高めたい人向け。プロクオリティに近づけたいなら知っておきたい。
- ★☆☆=必須ではないが、知っていると何かと便利な知識。
| ツール | 重要度 | 役割 | FL Studio純正の例 |
|---|---|---|---|
| ボリュームフェーダー | ★★★ | 楽器ごとの音量バランス | Mixerのフェーダー |
| Pan | ★★★ | 左右の定位 | Mixerのパンノブ |
| EQ | ★★★ | 1つの音の中の周波数バランス | Fruity Parametric EQ 2 |
| コンプレッサー/リミッター | ★★★ | 音量差を縮める・ピークを抑える | Fruity Limiter、Maximus |
| サチュレーション/ディストーション | ★★☆ | 倍音を足して存在感を出す | Fruity Soft Clipper、Distructor |
| リバーブ/ディレイ | ★★☆ | 空間と奥行き | Fruity Reeverb 2、Fruity Delay 3 |
| サイドチェーン | ★★☆ | Kickを聴かせる・グルーブ | Fruity Limiter、Peak Controller |
| ステレオイメージ | ★★☆ | 左右の広がり | Stereo Shaper |
| アナライザー | ★☆☆ | 周波数や音量を目で確認 | Wave Candy |
| ピッチ補正 | ★☆☆ | 音程をキーに合わせる | Pitcher、NewTone |
| トランジェント処理 | ★☆☆ | アタックと余韻の調整 | Transient Processor、Transmitter |
| Chorus/Flanger/Vocoder | ★☆☆ | 特殊な音作り | Vintage Chorus、Fruity Flanger、Vocodex |
※FL Studioのエディションによって付属するプラグインは異なります。最新の内容はImage-Line公式サイトで確認してください。
1. ボリュームフェーダー(重要度:★★★)

ボリュームフェーダーは、ミックスで一番重要なツールと言っても過言ではありません。当たり前すぎて軽視されがちですが、各楽器の音量を上げ下げしてバランスを整える、ミックスの基本中の基本です。操作は上下に動かすだけですが、良いバランスを作るには経験が必要で、正解が1つではない奥深いツールです。
2. Pan(重要度:★★★)

Panは、音の左右の位置(定位)を決めるツールです。音楽は基本的に左右2つのスピーカーで聴きます。左右差があるほど、曲は立体的で臨場感のある音になります。ただし振りすぎると違和感が出るので、ここもバランスが大切です。
3. EQ(重要度:★★★)

EQ(イコライザー)は、1つの楽器の中の「高い音と低い音のバランス」を整えるエフェクトです。人間が聴ける音の周波数はおよそ20Hz〜20,000Hzです。たとえばボーカルがモッサリしていれば300Hzあたりを削る、Bassに輪郭が欲しければ4,000Hz付近を持ち上げる、といった使い方をします。
ボリュームフェーダーが「楽器どうし」のバランスなら、EQは「1つの楽器の中」のバランスです。定番の有料EQにはFabFilter Pro-Q 4(2024年12月リリース)があります。詳しくは「EQの使い方やコツ」と「Parametric EQ 2の使い方」をどうぞ。
4. コンプレッサー/リミッター/マキシマイザー(重要度:★★★)

コンプレッサーは、音の大小差を小さくするエフェクトです。たとえばボーカルがサビでは大きく、イントロでは小さかったとします。イントロに合わせて音量を上げると、今度はサビが大きすぎてしまいます。これを防ぐのがコンプレッサーです。音の大小差が縮まるので聴きやすくなり、音圧(迫力)も上がります。KickやSnareのトランジェント(音の立ち上がり)の調整に使うこともあります。
リミッターやマキシマイザーは、コンプレッサーの極端なバージョンです。設定した上限を超えないように、音を強く圧縮します。マルチバンドコンプレッサーは、周波数帯ごとに圧縮の強さを変えられるコンプで、ドラムバスやマスターでよく使います。詳しくは「コンプレッサーの使い方」で解説しています。
5. サチュレーション/ディストーション(重要度:★★☆)

サチュレーションやディストーションは、倍音を足して音に存在感と自然な厚みを出すエフェクトです。本当は重要度を★★★にしたいくらいです。「EQもコンプも使っているのに、なぜ音がショボいんだ?」と感じているなら、サチュレーションやディストーションを使っていないのが原因かもしれません。
“Why have I never used distortion?” Audien, Sep 2011(X(旧Twitter)にて)
Audienが一躍有名になった曲「Wayfarer」のリリース直前の投稿です。曲を聴くと、特にベースがクリスピーで迫力がありますよね。それ以前のリリース「Eleven Eleven」と聴き比べると、音の存在感の違いがよくわかります。ディストーションやサチュレーションがいかに大事か、伝わったでしょうか。
6. リバーブ(重要度:★★☆)

リバーブは、音に反響(残響)をつけて空間を表現するエフェクトです。普段私たちが聴く音は、壁や床に反射して必ず「フェードアウトする尻尾」がつきます。スネアのサンプルにリバーブを一切かけないと、「このスネアはどこで鳴っているんだ?」と不自然に聴こえてしまいます。
反響時間をとても長くすれば、宇宙や大自然のような、現実にはありえない大きな空間も表現できます。リバーブを極めるとどうなるかは、Nigel Good – Tutorial: Reverb 101を見てみてください。
EDMでは「広さと狭さのメリハリ」が大切です。ドロップでは音圧が上がったように感じさせるため、わざとリバーブを減らすことがあります。たとえばOliver Heldens – Geckoの1:17〜のドロップです。無料で使える定番はValhalla DSPのValhalla Supermassiveです。詳しくは「リバーブの使い方」をどうぞ。
7. ディレイ(重要度:★★☆)

ディレイは、音を一定間隔で繰り返す「山びこ効果」のエフェクトです。リバーブとセットで空間系エフェクトと呼ばれますが、実際には曲のグルーブ感を増したり、空白を埋めたりする目的で重宝します。Rameses B – We Loveを聴くと、ボーカルやPluckに部分的にかけたディレイがグルーブを生んでいるのがわかります。詳しくは「ディレイの使い方」で解説しています。
8. サイドチェーンツール(重要度:★★☆)

サイドチェーンは、Kickが鳴った瞬間だけ他の音の音量を下げるテクニックです。ほとんどのEDMで使われています。わかりやすい例はIllenium – Fortressで、Kickが鳴るたびにシンセが沈んでいます。
Kickがはっきり聴こえる、グルーブ感が出るのがメリットです。ただし、かけすぎると聴きづらくなるので程度が大切です。やり方は簡単なものから順に次の3つです。
- LFO Toolなどの専用プラグインを使う(FL StudioならPeak Controllerでも可能)
- ボリュームのオートメーションを描く
- コンプレッサーのサイドチェーン入力機能を使う
具体的な設定は「サイドチェーンとは?具体的なやり方3つ」と「Peak Controllerの使い方」で解説しています。
9. ステレオイメージプラグイン(重要度:★★☆)

プロの曲をイヤホンで聴いて、「なんでこんなに音が広いんだ?」と思ったことはありませんか。基本的なステレオ感は、次の4つで作れます。
- Pan
- リバーブ
- Ping Pong Delay
- Mid/Side EQ
ただ、whysp x underscores – regretful(イヤホン推奨)のような最高峰の広がりを目指すなら、基本のエフェクトだけでは足りません。左右のわずかな時間差で広がりを作るHaas Effect(ハース効果)や、時間軸でPanを動かす処理が必要です。方法は次の2つです。
- Panのオートメーションを描く
- Auto PanやStereo Shaper、iZotope Ozone Imagerといった専用プラグインを使う
詳しくは「ステレオイメージの広げ方」と「Stereo Shaperの使い方」をどうぞ。
10. アナライザープラグイン(重要度:★☆☆)

アナライザーは、周波数バランスやステレオの広さを目で確認できるプラグインです。自分のミックスを客観的に見られるようになります。
ただ、実際に使っていて思うのは「そこまで万能ではない」ということです。アナライザー上はプロと同じでも、聴くとバランスがおかしいことはいくらでもあります。最終判断は自分の耳、が大前提です。とはいえ、マスタリングでは0.何dBの差を気にするので、使えて損はありません。詳しくは「アナライザーの使い方」と「Wave Candyの使い方」で解説しています。
11. ピッチ補正プラグイン(重要度:★☆☆)

ピッチ補正は、音程をキーに合うように調整するエフェクトです。いわゆる「オートチューン」と呼ばれるものですね。ボーカルはもちろん、ドラムや楽器のサンプルを曲のキーに合わせたいときにも使えます。FL Studioなら「Pitcher」が使えます。
12. トランジェント処理プラグイン(重要度:★☆☆)

トランジェント処理は、音の立ち上がり(アタック)と余韻(サステイン)を調整するエフェクトです。あまり有名ではありませんが、質の高い制作をしたいならぜひ使えるようになりたいツールです。たとえばKickをもっと短くタイトにしたいときは余韻を削り、アタックを強めたいときは立ち上がりを持ち上げます。
FL Studioでは「Transient Processor」が定番です。2026年7月公開のFL Studio 2026では、トランジェントとサステインを分けて処理できる新プラグインTransmitterも追加されました。
13. Chorus/Flanger/Vocoder(重要度:★☆☆)

最後は特殊な音作り用のエフェクトです。いつも使うものではありませんが、知っていると音作りの幅が広がります。
- Chorus(コーラス):音をカラフルかつワイドにします。Padによく使います。
- Flanger(フランジャー):音をうねらせます。Madeon – Cut The KidのイントロのPadを聴くと、少しFunkyでFuturisticな印象になるのがわかります。
- Vocoder(ボコーダー):いわゆる「ロボットボイス」です。Daft Punkの代名詞とも言える音で、Zedd – Done With Loveのイントロで聴けます。
《実践編》実際にミックスしてみよう
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道具がわかったところで、実際にミックスしていきます。結論から言うと、「下準備 → Drum と Bass → 残りの音 → オートメーション → ステレオ → リファレンスで仕上げ」の順に進めるのが効率的です。
0. 最初から高額なプラグインを揃えなくてOK

ここまで紹介したツールを有名メーカーの有料プラグインで揃えようとすると、たとえば次のような製品が候補になります。
- Waves のバンドル
- iZotope Ozone(現行は Ozone 12)
- LFO Tool(Xfer Records)
- FabFilter(Pro-Q 4、Pro-C 3 など)
- Valhalla DSP のリバーブ
すべて揃えると、合計でかなりの金額になります。価格はセールで大きく変動するので、購入するときは各公式サイトで確認してください。なお、海賊版のダウンロードは違法ですし、マルウェア感染のリスクもあるので絶対にやめましょう。私自身、これらを正規にすべて購入し、とんでもない金額が財布から飛んでいきました。
でも、お金がないとEDMのミックスができないわけではありません。FL Studioの純正プラグインだけでも、ミックスに必要な処理はひと通りできます。そこで私は、FL Studioの純正プラグインだけでミックス環境を組んだテンプレートを作りました。設定済みのプロジェクトを開いて、どんな設定になっているかを見るだけでも勉強になると思います。
この記事の手順は FL Studio Template Pro に設定済みです。 詳細を見る →
1. ミキサートラックに名前と色をつける

曲作りを始める前に、まずミックスの下準備をします。ミキサートラックに、あらかじめ名前と色をつけておきましょう。
- Drum(赤)
- Bass(青)
- Instruments(緑)
- Vocals(ピンク)
- FX(紫)
こうしておくと、どのミキサーに何が入っているかを探すムダが大幅に減ります。曲作りに夢中なときにミキサーを整理し始めると、集中力が途切れる原因になります。
2. BUSチャンネルを作っておく

先ほどのグループごとに、Drum BUS、Bass BUS、Instruments BUS、Vocals BUS、FX BUS のような「まとめチャンネル」を作っておきます。メリットは次の3つです。
- サイドチェーンをグループ単位でかけやすくなる
- 複数の楽器の音量をまとめて上げ下げできる
- エフェクトをまとめてかけられるので、CPUの負担を減らせる
3. 必ず使うエフェクトをあらかじめ読み込んでおく

各チャンネルには、次の7つをあらかじめ読み込んでおきます。
- Low Cut EQ(Sub Bass以外)
- HP/LP フィルター
- コンプレッサー
- サチュレーション
- ボリュームオートメーション用プラグイン
- リバーブ
- サイドチェーン用プラグイン
この7つはほとんどの音で使うエフェクトですが、何十ものチャンネルに毎回読み込むのは骨が折れます。FL Studioなら、エフェクトを並べたミキサートラックの状態を保存しておけば、すぐに呼び出せます。そしてマスターチャンネルには、次の4つを読み込んでおきます。
- アナライザープラグイン
- コンプレッサー(Ratioは1.2:1程度の軽い設定)
- Limiter(Ceilingは0dB)
- サチュレーション
Limiterは音圧を稼ぐためではなく、あくまでクリッピング(音割れ)防止用として使います。
4. オートメーションを作っておく

先ほど読み込んだHP/LP(ハイパス/ローパス)フィルターや、ボリュームオートメーション用プラグインは、プレイリスト上にオートメーションクリップを作っておきます。曲作りの途中で毎回オートメーションを作るのは手間なので、先にまとめて用意しておくと後が楽です。オートメーションの作り方は「FL Studioのオートメーションとは?」で解説しています。
5. 大まかなアレンジメントを作っておく

曲作りをスムーズにするために、「Intro」「Build Up」「Drop」などのセクションを作り、マーカーをつけておきます。展開は曲ごとに違っても、大まかな流れは毎回似ています。今どこを作っているかが明確になり、ミックスの優先順位もつけやすくなります。展開の作り方は「イントロの作り方」「ビルドアップの作り方」「ドロップの作り方」をどうぞ。
6. ここまでの下準備はテンプレートにできる
ここまでの下準備は、どのEDMの曲でも共通です。EDM Matrixでは、以上の作業をすべて設定済みのFL Studioテンプレートを販売しています。詳しくはこちらからチェックしてみてください。
初めての方がこの準備を自分でやると、コンプレッサーやサチュレーションの値の決め方、ルーティング(信号の流れ)の設定などで迷うかもしれません。その場合は、設定済みのプロジェクトを実際に動かしながら学ぶのが近道です。もちろん、各エフェクトの解説記事を読みながら自分で組んでいくのも良い勉強になります。
7. サンプルやVSTを読み込んで作曲開始

下準備ができたら、どんどん曲を作っていきましょう。サンプルやVSTは、読み込んだら必ず名前と色を変更し、正しいミキサートラックにルーティングします。7つの必須エフェクトは設定済みなので、ここからは曲作りに集中できます。
曲作りの全体の流れは「EDMの作り方 完全ガイド」を参考にしてください。ジャンルがまだ決まっていない方は、「Future Bass」「Future House」などのジャンル解説から、自分のイメージに近いものを探してみてください。
8. まずはDrumとBassをミックスする

曲がある程度形になったら、いよいよバランスを取ります。最初はDrumとBassです。DrumとBassはミックスの土台なので、全工程の中で一番重要です。
- ミキサーで「Drum BUS」と「Bass」以外をすべてミュートする
- Kickを-10dB程度の音量で鳴らす(ここを大きくしすぎると、後から全体のバランスが崩れやすくなります)
- Bassを一緒に鳴らし、サイドチェーンの深さを調整しながら音量を合わせる
BassとKickは周波数帯がかぶっているので、同時に鳴ると音圧が下がったり、ミックスが濁ったりします。Bassのミックスの基本は次の4つです。
- EQで300Hzあたりを削ってみる、4,000Hz以上を持ち上げてみる
- ディストーションを強めてみる
- コンプレッサーを強めてみる
- ほんの少しだけリバーブをかけてみる
まだ要素は2つだけなので、比較的簡単に気持ちの良いバランスが見つかるはずです。
Kickには、±1dB以下のEQ以外はなるべくエフェクトをかけないのがおすすめです。それでも満足できなければ、サンプル自体を替えましょう。Kickの選び方は「Kickの音作りのコツ」と「ドラムの音作りのコツ11選」で解説しています。
また、100Hz以下の低音は必ずモノラルにしましょう(左右差のない状態)。低音に左右差があると、ミックスが濁る原因になります。
9. 残りの音を足していく
DrumとBassがしっかりミックスできてグルーブが生まれていれば、ここからは比較的簡単です。音が小さくなりすぎないように注意しながら、1つずつ重ねていくだけだからです。
- Panを少しずつ左右に振り分ける
- リバーブ・ディレイ・サチュレーションの量を調整する
- 不要な周波数をEQでカットする
- サイドチェーンの深さを調整する
これを必要に応じて繰り返せば、ミックスはほぼ完成です。
10. アレンジに合わせてオートメーションをかける

セクションごとに音量やフィルターを変えたい場合は、準備しておいたオートメーションクリップを使ってまとめてオートメーションをかけます。ドロップで単純にボリュームを3dB上げるだけでも効果があります。オートメーションをサボらずに描くと、曲の表情がぐっと豊かになります。
11. ステレオイメージを調整する

何もしないと、曲は横方向の広がりが少なくなりがちです。準備編で紹介した方法で、曲にステレオの広がりを与えましょう。逆に、100Hz以下の低音はモノラルにしておくことも忘れずに。
12. アナライザーとリファレンス曲で仕上げる

最後に、自分の曲と雰囲気が近い市販の曲(リファレンス曲)をDAWに読み込みます。手順は次の通りです。
- リファレンス曲と自分の曲を、聴感上の音量をそろえて交互に聴く
- アナライザーを見ながら、周波数バランスが近づくように±1dB程度のEQで微調整する
- 大きすぎる楽器の音量を下げ、オートメーションも見直す
- マスターのピークが-6dB前後になるように、全体の音量をまとめて下げる(マスタリング用のヘッドルームを残すため)
これでミックス作業は終了です。次はマスタリングに進みます。最終ミックスのプロジェクトは、必ずバックアップを取っておきましょう。FL Studio 2026では、保存のたびにFL Cloudへ自動バックアップする「Project Backup」機能も追加されています。
《テクニック編》EDM特有のミックス技術
ここまでは、EDMに限らずどんなジャンルでも使えるミックス技術を紹介しました。ここからは、EDMらしさを作る特有のテクニックを6つ紹介します。
1. Sidechain Reverb
リバーブにサイドチェーンをかけたり、Wet値をオートメーションしたりして、Kickの合間にだけ残響を響かせる技術です。リバーブの量を増やしても音が濁りにくく、疾走感のあるビートになります。
2. Reverse Reverb
ボーカルによく使われる技です。リバーブの余韻を逆再生して、元の音の直前にくっつけることで、吸い込まれるような雰囲気を出せます。やり方は「Reverse(リバース)機能の使い方」で解説しています。
3. Pre Clap
ClapをKickと完全に同時に鳴らすと、もっさりした印象になりがちです。ほんの少しだけ前にずらしたり、短いClapを先に重ねたりすると、アタックが際立ってかっこよく聴こえます。
4. LFO Synth
Padなどの持続音は、揺らすことで生き生きとします。フィルターや音量をLFOで動かし、その速さや深さをオートメーションしましょう。Padの作り方は「美しいPadサウンドを作るコツ」をどうぞ。
5. Vocal Chop
ボーカルのサンプルを細かく刻み、ピッチを変えて並べ直すことで、Future Bassなどで定番の音を作れます。FL Studioなら「SliceX」を使うと簡単です。
6. Shuffle Beat
機械的に正確なビートは単調に聴こえがちです。ハイハットなどのタイミングを少しだけずらしてグルーブを作るのがShuffle(スウィング)です。FL Studioでは、チャンネルラックのSwingノブで簡単に調整できます。
よくある質問
ミックスは無料のプラグインだけでもできますか?
できます。FL Studioの純正プラグインには、EQ・コンプレッサー・リミッター・リバーブ・ディレイ・アナライザーなど、ミックスに必要なものがひと通りそろっています。無料のValhalla SupermassiveやXferのOTTを足せば、表現の幅もさらに広がります。
Kickの音量はどれくらいが目安ですか?
この記事では、ミックスの最初にKickを-10dB程度で鳴らすことをおすすめしています。最初に大きく鳴らしすぎると、他の音を足したときにすぐ音が割れてしまうからです。
ミックスが終わったマスターの音量はどれくらいにすべき?
ピークが-6dB前後に収まるように全体を下げておくと、マスタリングで処理する余裕(ヘッドルーム)が残ります。
まとめ
- ミックスは「音のバランスを整える作業」で、マスタリングでは悪いミックスは直らない
- まずはフェーダー・Pan・EQ・コンプの4つを使いこなし、FL Studioの純正プラグインから始めればOK
- 下準備 → Drum と Bass → 残りの音 → オートメーション → ステレオ → リファレンスで仕上げ、の順に進める
ミックスが終わったら、次は「マスタリングのやり方」へ進みましょう。各エフェクトをもっと深く知りたい方は「おすすめのVSTプラグイン【Effect編】」もどうぞ。

ミックスとマスタリングのチェーン、アレンジ、オートメーションを設定済みのFL Studio用プロジェクトテンプレート。メロディを打ち込むところから始められます。
- FL Studio 純正プラグインだけで動作(追加購入不要)
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