Vitalは、無料のBasicプランでもシンセの全機能が使えるウェーブテーブルシンセです。この記事では、EDMで出番の多い「Supersaw」「Reese/Growl Bass」「Pluck」の3つを、初期化した状態から手順どおりに作っていきます。
ツマミの数値は「出発点」の目安です。最後は必ず耳で判断してください。画面の各部の名前もあわせて説明するので、Vitalを初めて開く人でも迷わず進められます。
この記事でわかること
- Vitalの入手方法と、無料版(Basic)でできること
- 画面の構成(オシレーター/フィルター/エンベロープ/LFO/エフェクト)とモジュレーションのかけ方
- Supersaw・Reese Bass・Growl Bass・Pluck の作り方(手順つき)
- EDMのミックスで失敗しないための注意点
Vitalとは?無料版でもシンセ機能はすべて使える
Vitalは、Matt Tytel氏が開発したウェーブテーブルシンセで、無料のBasicプランでもシンセエンジンの機能に制限はありません。有料プランとの違いは、付属するプリセットとウェーブテーブルの量です。
| プラン | シンセ機能 | プリセット | ウェーブテーブル | その他 |
|---|---|---|---|---|
| Basic(無料) | すべて | 75 | 25 | ― |
| Plus | すべて | 250 | 70 | ― |
| Pro | すべて | 400以上 | 150 | テキストからのウェーブテーブル生成が無制限、追加スキンなど |
| サブスクリプション | すべて | 会員向けパック | ― | 支払額分のストアクレジット、新機能の先行利用など |
※2026年10月時点のVital公式サイトの表記です。料金は公式サイトで確認してください。
対応OSは Windows 10以降、macOS 10.15以降(Intel/Apple Silicon)、Ubuntu 18.04以降です。64bit専用で、OpenGL 3以上が必要です。
インストール手順
- vital.audioでアカウントを作成し、Basicプランを選びます。
- 自分のOS用のインストーラーをダウンロードして実行します。
- DAWでプラグインを再スキャンします。FL Studio なら「OPTIONS」→「Manage plugins」→「Find installed plugins」です。
- チャンネルラックの「+」から Vital を読み込み、初回はアカウントでログインします。
他の無料プラグインと組み合わせたい人は、無料VSTプラグインおすすめ【2026年版】も参考にしてください。
Vitalの画面構成と基本操作
Vitalの音作りは「オシレーターで音の素を作る → フィルターで削る → エンベロープとLFOで動かす → エフェクトで仕上げる」の順で考えると整理しやすいです。
| セクション | 役割 | EDMでよく触る項目 |
|---|---|---|
| OSC 1〜3 | ウェーブテーブルの発音部(3基) | ウェーブテーブル選択、Unison(ボイス数)、Detune、ワープ(波形の変形) |
| SMP | サンプル(ノイズなど)を鳴らす部分 | ノイズを薄く足して質感を出す |
| FILTER 1/2 | 音を削る・変化させる | Cutoff、Resonance、Drive、フィルターの種類 |
| ENV 1〜6 | 時間変化(ADSR) | ENV 1は音量。ENV 2以降はフィルターなどに割り当て |
| LFO 1〜8 | 周期的な揺れ | Wobble、フィルターの動き、波形の変化 |
| VOICES/GLIDE | 発音数・グライド | VOICES(同時発音数)、GLIDE(ポルタメント)、LEGATO |
| EFFECTS タブ | 内蔵エフェクト9種 | Chorus、Compressor、Delay、Distortion、EQ、Filter、Flanger、Phaser、Reverb |
フィルターは Analog、Dirty、Ladder、Digital、Diode、Formant、Comb、Phaser の8タイプから選べます。オシレーターの「ワープ」には Sync、Formant、Quantize、Bend、Squeeze、Pulse、FM、RM などがあり、スペクトラル・モーフ(倍音の変形)には Vocode、Harmonic Stretch、Smear、Phase Disperse、Shepard Tone などが用意されています。
モジュレーションのかけ方(ドラッグ&ドロップ)
Vitalでは、ENVやLFOなどのモジュレーション元を、動かしたいツマミへドラッグ&ドロップするだけで割り当てられます。
- ENV 2 や LFO 1 の見出し付近にあるドラッグ用のアイコンをつかみます。
- 動かしたいツマミ(例:FILTER 1 の Cutoff)の上で離します。
- ツマミの周りにリングが表示されます。リングをドラッグして、かかり具合(量と向き)を調整します。
割り当て済みのモジュレーションは「MATRIX」タブで一覧できます。音が思いどおりにならないときは、ここで不要な割り当てがないか確認しましょう。
はじめに:初期化(Init)から始める
以下の音作りは、すべて初期化した状態から始めます。プリセット名の横にあるメニューボタンから「Initialize Preset」(初期化)を選んでください。初期化した状態では OSC 1 だけが鳴っています。OSC 1 の波形がノコギリ波でない場合は、ウェーブテーブル名をクリックして、ノコギリ波(Saw)系の波形を選び直します。
この記事の手順は FL Studio Template Pro に設定済みです。 詳細を見る →
Supersawの作り方(Future Bass・Trance・Big Room のリード/コード)
Supersawは、少しずつピッチをずらした多数のノコギリ波を重ねた、分厚く広がる音です。Vitalでは OSC 1 のユニゾン機能で作れます。
- OSC 1 をノコギリ波にする:初期化した状態の OSC 1 を使います。
- Unison を増やす:OSC 1 のユニゾン数(Vitalでは最大16ボイス)を 7〜9 程度にします。
- Detune を調整する:少しずつ上げ、音がうねって広がるところで止めます。上げすぎると音程がぼやけるので、コードを弾いて確認します。
- Stereo Spread を確認する:ユニゾンの左右の広がりです。初期値(100%)のままで十分広がります。
- OSC 2 で厚みを足す:OSC 2 をオンにしてノコギリ波を選び、1オクターブ下(-12)に設定します。ユニゾン数は少なめ(3〜5)にし、レベルは OSC 1 より下げます。
- Polyphony を上げる:コードで使う場合は、メイン画面(VOICEタブ)の VOICES(同時発音数、初期値8)を増やします。音が途切れるときはここを確認します。
- ENV 1 を設定する:Attack を少し上げる(0.01秒前後)とプチッというノイズが減ります。Release は0.2〜0.4秒程度にします。
- フィルターで耳に痛い高域を整える:FILTER 1 をオンにして Analog などのローパスを選び、Cutoff を少し下げます。オシレーターの出力先が FILTER 1 になっているか確認してください。
- エフェクトで仕上げる:EFFECTS タブで Chorus を薄く、Reverb を少しかけます。仕上げに EQ で 150Hz 付近より下を削っておくと、ベースとぶつかりにくくなります。
よくある失敗は、Supersawの低域を残したままにして、キックとベースが埋もれることです。リード用なら低域は思い切って削り、低音はベースに任せましょう。リード作りの考え方はリードの作り方のコツ4選で解説しています。
Reese Bass/Growl Bass の作り方(Drum & Bass・Dubstep・Bass House)
Reese Bass は、わずかにデチューンした2つのノコギリ波がうねる太いベースです。Growl Bass は、そこにフィルターや波形の変化を周期的に加え、「唸る」ような動きを付けたものです。
Reese Bass の手順
- モノラル発音にする:VOICES(同時発音数)を1にし、LEGATO をオンにします。GLIDE(ポルタメント)を少しだけ上げると、音程移動がなめらかになります。
- OSC 1 と OSC 2 をノコギリ波にする:両方をオンにして、同じオクターブ(必要に応じて両方 -12)にそろえます。
- わずかにずらす:OSC 1 と OSC 2 のユニゾンを 2〜4 ボイスにし、Detune を少量だけ上げます。ゆっくりうねる程度が目安です。
- ローパスで丸める:FILTER 1 を Analog か Ladder のローパスにし、Cutoff を中域あたりまで下げます。Drive を少し上げると芯が出ます。
- LFO でうねりを足す:LFO 1 を FILTER 1 の Cutoff にドラッグし、少量だけかけます。LFO のレートを Tempo モードで 1/2 や 1/1 にすると、曲のテンポと同期した、ゆっくりした動きになります。
- Distortion で存在感を出す:EFFECTS タブの Distortion をオンにし、Soft Clip から試します。Mix を下げて原音と混ぜると、低域が痩せにくくなります。
Growl Bass へ発展させる手順
- 波形を動かす:OSC 1 のウェーブテーブルを倍音の多い波形に替え、LFO 1 を OSC 1 の Wave Frame(ウェーブテーブルの位置)にドラッグします。
- ワープで倍音を増やす:OSC 1 のワープを FM や Sync にして、量を LFO で動かします。
- フォルマントで「唸り」を作る:FILTER 2 を Formant タイプにし、LFO 1(または LFO 2)で動かします。母音のような「ヤウヤウ」という動きになります。
- LFOの形を描く:LFO のグラフ上でクリックして点を追加し、形を描き換えます。リズムに合わせた段階的な形にすると、ダブステップらしい動きになります。
- 歪ませてからまとめる:Distortion(Hard Clip や Sine Fold)で倍音を足し、最後に Compressor(マルチバンド)で暴れを抑えます。
ポイントは、低域(おおむね100Hz以下)は動かさず、上の帯域だけを動かすことです。Vital単体で分けるのが難しいときは、サブベースだけを別のトラックでサイン波として鳴らし、Growl側の低域をEQで削る方法が一般的です。ベース作り全般はベースの作り方のコツ6選、キックとの棲み分けはサイドチェーンとは?を参考にしてください。
Pluckの作り方(Future House・Tropical House・メロディ)
Pluckは、弦をはじいたような短く減衰する音です。ENV 2 でフィルターを素早く閉じると作れます。
- オシレーターを準備する:初期化した OSC 1 のノコギリ波を使います。ユニゾンは 3〜5 ボイス、Detune は控えめにします。
- 音量のエンベロープを短くする:ENV 1 の Attack を最小、Decay を0.2〜0.4秒、Sustain を0にします。Release は Decay と同じくらいにします。
- フィルターを閉じ気味にする:FILTER 1 をローパスにし、Cutoff をかなり下げておきます。
- ENV 2 で Cutoff を動かす:ENV 2 を FILTER 1 の Cutoff にドラッグし、リングを上方向に大きく広げます。ENV 2 は Attack 最小、Decay 0.1〜0.3秒、Sustain 0 にします。
- Keytrack を上げる:FILTER 1 の Keytrack を上げると、高い音ほど明るくなり、音域による明るさの差が自然になります。
- 空間系を足す:Delay(1/8 や 1/8付点の Tempo 同期)と Reverb を加えます。リバーブは Mix を控えめにして、アタックがぼやけないようにします。
Decay の長さを変えるだけで、マリンバのような短い音から、ハープのように余韻が残る音まで作り分けられます。Pluckの応用はプラックとは何か?作り方・応用方法でも紹介しています。
応用:マクロとノイズで「曲の中で使える音」にする
作った音をそのまま曲に入れるより、マクロで変化を付けたり、ノイズで質感を足したりすると、ビルドアップやドロップで使いやすくなります。
マクロでビルドアップ用の変化を1つのツマミにまとめる
Vitalには4つのマクロ(MACRO 1〜4)があり、複数のパラメーターを1つのツマミでまとめて動かせます。
- MACRO 1 を、FILTER 1 の Cutoff にドラッグします。
- 同じ MACRO 1 を、Reverb の Mix や OSC 1 の Detune にもドラッグします。
- それぞれのリングの量を調整し、MACRO 1 を上げるほど「明るく・広く」なるようにします。
- DAW側で MACRO 1 をオートメーションします。FL Studio なら、MACRO 1 を少し動かしてから、メニューの「TOOLS」→「Last tweaked」→「Create automation clip」を選びます。
ビルドアップでフィルターを開いていく定番の演出が、ツマミ1つで作れます。オートメーションの基本はFL Studioのオートメーションとは?、ビルドアップ全体の作り方はビルドアップの作り方で解説しています。
SMP(サンプル)でノイズを薄く足す
SMP セクションをオンにしてノイズ系のサンプルを選び、レベルをかなり小さくして混ぜると、デジタル的な冷たさが和らぎ、音に空気感が出ます。PluckやSupersawのアタックに少しだけ足すのが効果的です。ノイズを使った音質アップの考え方はノイズを使って音質を上げる方法も参考にしてください。
Vitalで音作りするときのコツと注意点
Vitalは自由度が高いぶん、気づかないうちに音量やCPU負荷が大きくなりがちです。次の点を意識すると失敗が減ります。
- 出力レベルを確認する:ユニゾンを増やすと音量が上がります。DAWのミキサーでピークが赤くならないよう、Vitalのマスターボリュームで下げてから送りましょう。
- CPU負荷を減らす:ユニゾン数と同時発音数(VOICES)は CPU 負荷に直結します。音が決まったら、オーディオに書き出す(FL Studio ならレンダリング)と軽くなります。
- プリセットを分解して学ぶ:付属プリセットを開き、MATRIX タブでどんなモジュレーションが組まれているかを見ると、作り方の型が身につきます。
- 自作の音を保存する:気に入った音はプリセットとして保存し、ジャンル別のフォルダーに整理しておくと、次の曲で時短になります。
- Serumとの違い:Vital も Serum もウェーブテーブルシンセで、考え方はほぼ共通です。Serum の解説はSerumの使い方にあります。
よくある質問
VitalとSerum 2はどちらがいいですか?
これからシンセを学ぶなら、無料で全機能が使える Vital から始めるのがおすすめです。Serum 2 は有料ですが、市販プリセットやチュートリアルが非常に多いのが強みです。Vital で基本が身についてから、必要に応じて検討しても遅くありません。
Vitalで作った音を商用の曲に使ってもいいですか?
Vitalで鳴らした音を自分の曲に使ってリリースすることは、一般的には問題ありません。プリセットそのものを再配布・販売する場合の条件は、Vital公式の利用規約を確認してください。
Vitalが重い・音が途切れるときは?
ユニゾン数と同時発音数(VOICES)を減らす、DAWのバッファサイズを大きくする、使わないオシレーターやエフェクトをオフにする、の順で試してください。PCの選び方はDTM向けPCの記事も参考になります。
まとめ
- Vital は無料の Basic でもシンセ機能はすべて使える。違いはプリセットとウェーブテーブルの量
- Supersaw はユニゾン、Reese はわずかなデチューン、Growl は LFO+Formant、Pluck は ENV 2 でフィルターを閉じる、が基本
- 低域は動かさない・音量とCPU負荷を管理する、がEDMで失敗しないコツ
次に読むなら、ほかの無料プラグインをそろえる無料VSTプラグインおすすめ、作った音をドロップに組み込むドロップの作り方10選がおすすめです。音作りはできても曲の構成でつまずく人は、完成済みのプロジェクトを開いて中身を確かめられる FL Studio テンプレートも役立ちます。

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