EDMのビルドアップの作り方

ビルドアップを作っても、ドロップが思ったほど盛り上がらない。そんなときは、「スネアロールの加速」「ピッチとフィルターのオートメーション」「ドロップ直前の間」の3つを見直すのが近道です。アレンジメント講座では、EDMのアレンジの作り方を具体例を交えて紹介しています。今回は第2回「ビルドアップの作り方」です。定番テクニック6つと、FL Studioでの具体的な手順を解説します。

この記事でわかること

  • ビルドアップの役割と、8小節・16小節の構成の目安
  • スネアロール、ピッチ、ライザー、フィルター、リバーブ、ドロップ前の「間」の6つのテクニック
  • FL Studioのオートメーションで組み立てる手順と、よくある失敗

ビルドアップ(Build-Up)とは?ドロップ前に緊張感を作る部分

EDMの曲構成におけるビルドアップの位置

ビルドアップとは、ドロップの直前で曲を最大まで盛り上げ、テンション(緊張感)を作る部分のことです。曲のアレンジメント(構成)の一部で、ブレイクダウンのあとに置かれることが多いです。

ここでどれだけリスナーをTease(じらす・煽る)できるかが、ドロップの満足感の大きさを決めます。言い換えると、ドロップの強さはドロップ単体ではなく、直前のビルドアップとの「落差」で決まります。

例えば、上の動画ではSkrillexがライブパフォーマンスで観客を上手に煽っているのがわかると思います。このようなテンションの作り方を、今回は解説します。

まずは上の動画で、MOTiのビルドアップの作り方をよく見てから(19:00くらいから)、以下の方法をチェックしてみてください。

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ビルドアップの長さと構成の目安

ビルドアップは8小節か16小節で作るのが基本です。EDMはDJがミックスしやすいように、8小節単位で展開が変わる曲が多いためです。迷ったら、まず8小節で作ってみましょう。

8小節のビルドアップは、おおまかに次の3段階で考えると組み立てやすくなります。

段階小節の目安やること
前半1〜4小節スネアやライザーを入れ始める。リズムはゆったり(4分音符など)
後半5〜7小節スネアロールを細かくし、ピッチ・フィルター・リバーブを上げていく
直前8小節目(最後の1〜2拍)音を抜いて「間」を作るか、ロールを最大まで詰めて一気にドロップへ

大事なのは、すべての要素が同時にゴール(ドロップの1拍目)に向かって上がっていくことです。スネア、ピッチ、フィルター、音量の「上昇カーブ」をそろえると、リスナーは自然に次の展開を予感します。

1. スネアロール:だんだん細かくして加速させる

ビルドアップのスネアロールとピッチのオートメーション

ビルドアップで最も典型的な要素が、スネアロールです。スネアを画面上に並べていくだけなので、まったく難しくありません。ポイントは、後半に行くほど音符を細かくして「加速」しているように聞かせることです。

  1. 最初の2小節は4分音符で並べる
  2. 次の2小節は8分音符にする
  3. 次の2小節は16分音符にする
  4. 最後の2小節は32分音符まで詰める(8小節の場合)

あわせて、ベロシティ(音の強さ)や音量を少しずつ上げると、さらに自然な盛り上がりになります。ただ並べるだけでも効果はありますが、この後紹介する他の技と組み合わせると、より面白くなります。

2. ピッチ・オートメーション:音程を少しずつ上げる

ピッチのオートメーションカーブ

スネアのピッチ(音の高さ)を、ドロップに向かってだんだん上げていくと、緊張感が一気に高まります。上のスネアの画像の下にあるオートメーションのようなイメージです。

上げ幅の目安は、8小節で1オクターブ(12半音)程度です。上げすぎるとスネアが細く、おもちゃのような音になるので、耳で確認しながら調整しましょう。スネアだけでなく、ライザーやボーカルチョップのピッチを一緒に上げるのも効果的です。

3. Riser FX:ライザーとホワイトノイズを重ねる

ライザーとホワイトノイズをレイヤーしたプレイリスト

上の画像のように、サンプルパックに入っている「Riser」「White Noise」などを3個くらいレイヤーして、テンションを強化しましょう。役割の違う音を重ねるのがコツです。

  • ホワイトノイズ…ローパスフィルターを徐々に開けて「シャー」という音を上昇させる
  • シンセのライザー…ピッチが上がっていく音で、音程感のある上昇を作る
  • リバース系の音…シンバルなどを逆再生した音を、ドロップの1拍目に終わるように置く

ドロップの1拍目には、Impact(ドン、という衝撃音)やDownlifter(下降していく音)を置くと、ビルドアップの終わりがはっきりします。FXの種類はFX(エフェクト)の種類と使い方、ノイズの活用法はノイズを使って音質を上げる方法で詳しく解説しています。

4. ハイパス・フィルター:低音を抜いてドロップで戻す

ドロップの低音をより強くヒットさせるために、ビルドアップ中はハイパスフィルター(Low Cut)で低域を少しずつ削っていきます。これはもはや定番のテクニックです。

DJがミックスで使うのとまったく同じ要領で、ビルドアップ中にベースとキックの低域を減らし、ドロップの1拍目で一気に元に戻すのがポイントです。耳が低音のない状態に慣れたところで低音が戻るので、ドロップが実際の音量以上に大きく聞こえます。

5. ReverbのWetを増やす:音を遠くに飛ばす

リバーブのWetをオートメーションする設定

リバーブのWet(残響の量)をだんだん増やすと、音が「遠くに飛んでいく」ように聞こえます。

1:23〜のビルドアップを聴いてみましょう。音が遠くに飛んで行ったと思ったら、ドロップで急に目の前に来ます。このような表現は、DJプレイでも昔からよく使われています。

やり方は、ハイパスフィルターとリバーブのミックス値をオートメーションするだけなので、誰でも無料で作れます。Dada Lifeはこの効果を「Endless Smile」というプラグインにしていて、上の動画はその紹介です。Sausage Fattener も出していますし、「手軽にあのエフェクトを作れる」製品づくりが狙いのようですね。

リバーブの設定はリバーブの使い方とコツも参考にしてください。

6. ドロップ直前の「間」:一瞬音を抜く

ドロップの直前に1拍〜1小節ほど音を抜いて「間」を作ると、ドロップの入りが劇的に強くなります。ずっと鳴っていたロールやライザーが突然止まると、リスナーは「来る」と身構えるからです。

  • 最後の1〜2拍だけ、すべてのトラックを止める(無音にする)
  • 無音の代わりに、ボーカルの一言やボーカルチョップだけを残す
  • リバーブの残響だけを残し、ドライの音を止める

逆に、間を作らずにロールを最後まで詰めて、そのままドロップに入るパターンもあります。どちらが合うかは曲次第なので、両方試して比べてみてください。

FL Studioでビルドアップを作る手順

FL Studioでは、オートメーションクリップを使えば、ここまでのテクニックをすべて再現できます。基本の流れは次のとおりです。

  1. ドロップの直前に、8小節(または16小節)のビルドアップ用のスペースを空ける
  2. ステップシーケンサーかピアノロールで、4分→8分→16分→32分と細かくなるスネアロールを打ち込む
  3. スネアのチャンネルのピッチのノブを右クリックし、「Create automation clip」でオートメーションクリップを作り、右上がりのカーブを描く
  4. ライザーとホワイトノイズのサンプルをプレイリストに並べ、終わりをドロップの1拍目にそろえる
  5. ミキサーのインサートにEQやフィルターを入れ、ローカットの周波数を同じようにオートメーションする
  6. Fruity Reeverb 2 などのリバーブのWetをオートメーションで上げ、ドロップの1拍目で戻す

オートメーションの基本はFL Studioのオートメーションとは?、リバーブの操作はFruity Reeverb 2の使い方で解説しています。

よくある失敗:ビルドアップがドロップより大きい

ビルドアップで要素を足しすぎると、ビルドアップのほうがドロップより音量が大きく、うるさく聞こえることがあります。こうなるとドロップで「下がった」ように感じてしまいます。ライザーやノイズの音量は控えめにし、ハイパスで低域を抜いて、ドロップのために余白を残しておきましょう。

よくある質問

ビルドアップは何小節がいいですか?

8小節か16小節が基本です。テンポが速い曲や、ブレイクダウンが長い曲では16小節にすると、自然に盛り上げやすくなります。迷ったら8小節から作り、物足りなければ16小節に伸ばしましょう。

ライザーは自分で作るべきですか?

最初はサンプルパックのライザーで十分です。慣れてきたら、シンセでホワイトノイズを鳴らし、フィルターとピッチをオートメーションすれば自作できます。自作すると、曲のキーやテンポに合わせやすくなります。

ビルドアップを作ってもドロップが盛り上がりません。

多くの場合、ビルドアップとドロップの「落差」が足りていません。ビルドアップ中に低域を抜けているか、直前に間を作れているかを確認しましょう。ドロップ側の作り方はドロップの作り方10選で解説しています。

まとめ

  • ビルドアップはドロップ直前に緊張感を作る部分で、8小節か16小節が基本
  • スネアロールの加速、ピッチ・フィルター・リバーブのオートメーション、ライザーの重ね方で盛り上げる
  • ドロップの強さは「落差」で決まる。低域を抜き、直前に間を作ってドロップで一気に戻す

アレンジメント講座のほかの回もあわせてどうぞ。

それでは以上で、ビルドアップの作り方の解説を終わります。また次回、お会いしましょう。Happy Producing<3

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