EDMのキックの音作り

パンチがあってタイトなKickは、良いサンプルを選び、曲のキーに合わせ、EQ・コンプ・トランジェント処理で最小限だけ整えることで作れます。EDMで一番重要な音は何かと聞かれたら、Kickと答える人は多いでしょう。Kickには次の特徴があるからです。

  • 曲中で最も頻繁に聴こえる音
  • 低域のアタックから高域のクリック音まで、幅広い周波数を含む
  • リズム感・グルーブ感を決定する

この記事では、海外のプロがKick作りで使っている技を5つ解説します。

この記事でわかること

  • Kickのサンプルの選び方と、ピッチを曲のキーに合わせる方法
  • EQとコンプのスタート地点になる設定値
  • トランジェント処理でアタックと長さを整える方法
  • Kickのレイヤーと、Kick 3などのキック生成プラグインの使いどころ

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1. 高品質なサンプルを使う

Kickの音の80%は、サンプル選びで決まります。以前の記事「ドラムの音作りのコツ11選」でも紹介しましたが、まずはサンプルが高品質かどうかを確認しましょう。

高品質といっても、必ずしも有料である必要はありません。無料でも、ジャンルに合った音で、WAVファイルなら問題ありません。SpliceやCymaticsなどで、自分のジャンルやイメージに近い音を10個以上探しておきます。そして実際に曲を作りながら入れ替えて、ベストなサンプルを探します。

Kickを選ぶときは、次の3点をチェックすると失敗が減ります。

  • ジャンルに合った長さか:Big RoomやHardstyleは長く太いKick、Future HouseやTech Houseは短くタイトなKickが多い
  • アタック(クリック音)が聴こえるか:スマホのスピーカーなど低域が出ない環境でもリズムが伝わるか
  • 低域にノイズや余計な響きがないか:ベースと混ざったときに濁らないか

サンプルパックの詳しい情報は、以下の記事を参考にしてください。

2. ピッチを合わせる

Kickのピッチは、曲のキーのルート音か5度の音に合わせるのが基本です。どんな曲にもたいてい「キー」があり、キーにない音が鳴ると、人は音が「外れた」と感じます。ピッチ合わせはスネアやタムでやるものと思われがちですが、Kickも合わせると、ベースとの一体感がぐっと増します。

手順は次の通りです。

  1. Kickを単体で鳴らし、アナライザーで一番大きく出ている低域の周波数(基音)を確認する
  2. その周波数が、曲のキーのどの音に近いかを調べる
  3. サンプラーのピッチ(FL Studioならチャンネル設定のPitch)で、ルート音か5度に合わせる

上の動画では、DYROがドラムをチューニングする方法を解説しています。動画で見たい方はどうぞ。

3. EQとコンプの設定

EQとコンプは、「不要な帯域をカットし、強めのコンプで存在感を固める」のが基本です。以下はあくまでスタート地点なので、最後は自分の耳で微調整してください。

EQの設定

KickのEQ設定例↑EQ設定

上の図のように、ハイパスフィルターを25Hz、ローパスフィルターを15,000〜20,000Hzにかけます。人にはほとんど聴こえない超低域や超高域をカットすることで、最終的なマスターの音圧に余裕が生まれます。

コンプの設定

Kickのコンプレッサー設定例

↑コンプ設定

パラメータ設定の目安
Ratio(レシオ)4:1
Attack(アタック)16ms
Release(リリース)85ms
Make-up Gain4dB

アタックを少し遅めにすると、最初のクリック音がコンプをすり抜けて、パンチが強調されます。基本的にKickは強めにコンプをかけたほうが、後でミックスに埋もれにくくなります。コンプの基本は「コンプレッサーの使い方」で解説しています。

その他のエフェクトは、実はあまりかけないほうが良いことが多いです。今のKickに満足できなければ、サンプルを替えたほうが早い場合がほとんどです。特にリバーブやディストーションは、クリエイティブに聴こえることもありますが、たいていは低域が濁る原因になるので気をつけてください。

4. トランジェントプロセッサーで調整する

Transient ProcessorでKickのアタックを強めた設定

↑アタックを強く、リリースを弱く設定

EQとコンプ以外で積極的に使っていいのが、トランジェントプロセッサーです。音の始まり(アタック)と終わり(余韻)を調整するエフェクトで、上の図ではKickのアタックを強め、Releaseを弱くしています。下の波形の赤い線が音量で、音の始まりが強調され、終わりが短くなっているのがわかります。

Kickの余韻が長すぎてBPMに合わない、パンチが足りない、と感じたら試してみてください。FL StudioではTransient Processorが使えます(エディションによっては別途購入が必要です)。使い方は「Transient Processorの使い方」で解説しています。また、FL Studio 2026では、トランジェントとサステインを分けて処理できる新プラグインTransmitterも追加されました。

5. 複数のKickをレイヤーする/キック生成プラグインを活用する

Kickは、低域で「威力を感じさせ」、高域で「リズムを刻む」イメージで作ります。上の動画では、Asher Postmanがパンチのあるキックを作るために、Low End(低域)担当のKickとHigh End(高域のクリック音)担当のKickに分けて音作りしています。

レイヤーするときは、次の点に注意しましょう。

  1. 役割で帯域を分ける:低域担当はローパス、クリック担当はハイパスをかけて、帯域が重ならないようにする
  2. 位相(波の向き)をそろえる:重ねたら低域が痩せた、と感じたら、片方の位相を反転したり、タイミングを数ms動かしたりする
  3. まとめてから処理する:レイヤーしたKickは1つのミキサートラックにまとめ、そこでEQやコンプをかける

ゼロからKickを作りたい場合は、キック生成プラグインも便利です。たとえばSonic AcademyのKick 3(2024年10月リリース)は、クリックとサブを複数レイヤーで組み合わせられ、手持ちのKickサンプルを読み込んで分析・再現する機能もあります。購入前に試用できるかどうか、価格などは公式サイトで確認してください。

サンプルで満足できるなら、無理にプラグインで作る必要はありません。「サンプルの低域だけ足りない」というときに、プラグインで作ったサブを足す、という使い方がおすすめです。

よくある失敗と対策

Kick作りでつまずきやすいのは、音量を上げすぎることと、ベースとの関係を後回しにすることです。

  • Kickが大きすぎる:ミックスの最初はKickを-10dB程度で鳴らし、他の音を足す余裕を残しましょう。
  • ベースと低域がぶつかる:サイドチェーンでKickが鳴る瞬間だけベースを下げると、Kickがはっきり聴こえます。
  • 低域が左右に広がっている:100Hz以下はモノラルにしておくと、クラブやスマホでも安定して鳴ります。

よくある質問

Kickのピッチはどの音に合わせればいいですか?

曲のキーのルート音か、5度の音に合わせるのが基本です。アナライザーでKickの基音を確認してから、サンプラーのピッチで調整しましょう。

Kickにリバーブやディストーションをかけてもいいですか?

かけてはいけないわけではありませんが、低域が濁りやすいので慎重に使いましょう。かけるなら、ハイパスをかけたセンドトラックで高域だけにかけるのが安全です。

Kick 3のようなプラグインは必要ですか?

必須ではありません。良いサンプルがあれば十分です。理想の低域がどうしても見つからないときや、Kickを細かく作り込みたいときに検討すると良いでしょう。

まとめ

  • Kickの8割はサンプル選びで決まる。候補を10個以上用意して聴き比べる
  • ピッチをキーに合わせ、EQで不要な帯域をカット、コンプは強めにかける
  • パンチ不足はトランジェント処理やレイヤーで補い、余計なエフェクトはかけない

Kick以外のドラムは「ドラムの音作りのコツ11選」と「Snareの音作りのコツ」、ベースとの組み合わせは「ベースの作り方のコツ」をどうぞ。何か質問があればコメントお待ちしています。それではまた次回の記事でお会いしましょう。Happy Producing<3

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