ストリーミングサービスのイメージ

「やっと満足できるクオリティの曲ができた。でも、聴いてくれる人がいない」。そんな悩みを持つ個人プロデューサーに向けて、全11回で、日本にいながら世界中のリスナーに曲を届ける方法=マーケティングのやり方を解説していきます。第1回の結論は、今は個人でも世界中に曲を配信できる。ただし配信しただけでは聴かれないので、「配信」と「宣伝(ブランド作り)」をセットで考えるということです。

この記事でわかること

  • ストリーミングが主流になった今の音楽業界の仕組み
  • 個人配信(ディストリビューション)とレーベル契約の違い
  • Spotifyの1,000再生ルールなど、配信前に知っておきたいポイント
  • 再生数を伸ばすための「個人ブランド」の考え方

EDMマーケティング講座の全体像(全11回)

今回は第1回として、EDMマーケティングの土台になる「音楽業界の仕組み」を確認していきます。

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今の音楽消費の主流はストリーミング

米国の音楽売上に占めるストリーミングの割合の推移(Statista、2019年時点の図)

Statistaより(この記事の初版時点の図です)

曲が完成したら、次に考えるべきは「世界のリスナーがどうやって音楽を聴いているか」です。答えは、ストリーミング・サービス(Spotify、Apple Music、YouTube Music など)です。上の図は初版当時のアメリカのデータですが、その後もストリーミングは世界の録音音楽市場で最大の収益源であり続けています。最新の市場データは、IFPI(国際レコード産業連盟)が毎年発表する Global Music Report で確認できます。

ストリーミング・サービスとは、月額料金を払うと(または広告付きの無料プランで)、膨大な数の曲を聴き放題にできるサービスです。

これは、個人プロデューサーにとって大きなチャンスです。かつては、大手レコード会社と契約しない限り、世界の店頭にCDを並べることはできず、ほとんど誰にも聴いてもらえない状況でした。今は、個人がネットに曲をアップロードするだけで、世界中のリスナーに届けられます。大企業に頼らず、自分の力でファンを作れる時代なのです。

楽曲の配信(デジタル・ディストリビューション)

デジタル・ディストリビューション各社のロゴ

aristake.comより

各ストリーミング・サービスに曲を届けることを、デジタル・ディストリビューション(配信)と言います。方法は大きく2つです。

方法メリットデメリット
ディストリビューターを使って個人で配信手軽で、売上の取り分が大きい。リリースのタイミングも自由宣伝はすべて自分でやる必要がある
レコード会社(レーベル)と契約宣伝・プロモーションをしてもらえる。レーベルの「お墨付き」が得られる売上の一部(ロイヤリティ)をレーベルが受け取る

個人配信は、ディストリビューターと呼ばれる専門の会社を経由すれば、手頃な費用で行えます。国内では TuneCore Japan や BIG UP! などが、海外では DistroKid などが代表的です。FL Studio ユーザーなら、FL Cloud の有料プランから DistroKid 経由で配信する方法もあります(解約すると配信中の曲が取り下げられる点に注意)。料金や条件は変わることがあるので、各社の公式サイトで確認してください。

一方、レーベルと契約すると、売上の一部を取られる代わりに、宣伝・広告をしてもらえます。「自分の力で宣伝できる」という方は個人配信が向いていますが、「Spinnin’ Records から出た曲」「Monstercat から出た曲」といったお墨付きは、その後のプロモーションを大きく後押ししてくれます。レーベル契約は必ずしも悪いものではないことを覚えておきましょう。

配信前に知っておきたい最近のルール

ストリーミングは誰でも参加できる反面、ルールも年々変わっています。特に次の3点は押さえておきましょう。

  • Spotifyの1,000再生ルール: 2024年4月から、直近12か月で1,000再生に満たない曲は、録音原盤の印税の対象外になりました。「とりあえず大量に曲を出す」より、1曲ずつ聴かれる工夫をすることが大切です。
  • 不正再生への対策: 再生数を水増しするサービスの利用は厳禁です。悪質な不正再生が見つかると、レーベルやディストリビューターにペナルティが科され、配信停止につながることもあります。
  • AI生成曲のポリシー: Spotify は2025年にスパム対策やなりすまし(無断の声のクローン)の禁止、AIの使用を明示するクレジット表示の方針を打ち出しました。AIを使う場合も、各サービスと配信会社の規約を確認しましょう。

広告・宣伝(PR)=個人ブランドを作る

個人ブランドのイメージ

Spotify や Apple Music に曲をアップしたあと、ほぼ必ず直面するのが「再生数が全然増えない」という悩みです。世界には無数のプロデューサーがいるので、どんなに良い曲でも、あなたのことを知らない人は気づいてくれません。そこで必要になるのが、周りから一歩抜け出すための宣伝、つまり個人ブランドを作ることです。

個人ブランドを理解するには、自分の好きなプロデューサーを思い浮かべて、「なぜ」「いつ」「どこで」「何が」好きになったのかを分析するのが一番です。SNSの投稿がいつも面白い、ミュージック・ビデオが印象的だった、Spotify のプレイリストで知った、などいろいろあるはずです。この講座では、次のテクニックを順番に紹介していきます。

  • ビジュアル・ブランディング(ロゴやジャケット画像)
  • SNSでのブランディング(Instagram、YouTube、X、Facebook などの活用)
  • Spotify・SoundCloud・YouTube の攻略

1つずつ順番にクリアしていけば、少しずつ再生数は増えていくはずです。

Content is king, but distribution is queen

コンテンツとマーケティングの関係のイメージ

最後に、マーケティングの心構えを紹介します。海外の音楽ビジネスでよく言われるのが、次の言葉です。

Content is king, but distribution is queen.(コンテンツの質が一番大事。でも、配信や宣伝などのマーケティングも同じくらい大事)

「あのプロデューサーはマーケティングがうまいだけ」「宣伝ばかりで曲はつまらない」といった愚痴は、プロデューサーの間でよく聞きます。ですが、マーケティングをしなければ、いつまで経っても曲は誰にも届きません。楽曲はもちろん大事。でも、マーケティングもやらなければいけない。少し面倒に感じるかもしれませんが、必要な情報はこの講座で順番に解説していきます。

よくある質問

個人配信とレーベル契約、最初はどちらがいいですか?

まずは個人配信で数曲リリースし、反応を見ながら実績を作るのがおすすめです。並行して、自分の曲に合うレーベルにデモを送ってみましょう。送り方は#3で解説しています。

SoundCloud に上げるだけではだめですか?

SoundCloud はファンとの交流やデモの公開に便利ですが、Spotify や Apple Music で聴く人も多いので、両方に出すのが基本です。詳しくは#9 SoundCloudの攻略法をどうぞ。

まとめ

  • 今の音楽消費の主流はストリーミング。個人でも世界中に曲を配信できる
  • 配信方法は「個人配信」と「レーベル契約」の2つ。それぞれにメリットがある
  • 配信しただけでは聴かれない。個人ブランドを作り、宣伝まで計画する

次は#2 EDMプロデューサーに英語力は必要なのか?に進みましょう。まだ曲が完成していない方は、EDMの作り方 完全ガイドからどうぞ。Happy Producing <3

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