
海外レーベルとの契約は、「小さめのレーベルから順番に、1社ずつ丁寧にデモを送る」ことの積み重ねで近づけます。この記事は、日本人の個人EDMプロデューサーが海外で活躍する方法を解説する「EDMマーケティング講座」の第3回です。レーベルの探し方から、デモ提出の窓口、英文メールの書き方、英語が苦手な人のための翻訳ツールの使い方まで解説します。
この記事でわかること
- レコード会社(レーベル)と契約するメリットと、レーベルなしでリリースする選択肢
- 自分に合うレーベルの探し方と、2026年時点のデモ提出の窓口(LabelRadar・SubmitHubなど)
- デモを送る英文メールの書き方と、送る前に必ず守るべき注意点
レコード会社(レーベル)とは?契約するメリット

トップレーベルの例↑
レーベルと契約すると、認知度・信頼・流通・人脈の4つが一気に手に入ります。EDM好きの方なら、一度は次のような名前を聞いたことがあるでしょう。
- Spinnin’ Records
- Monstercat
- Armada Music
- Revealed Recordings
これらはEDMのレーベルの中でもトップクラスの会社です。こうした会社からリリースできると、
- 自分の認知度が上がる
- 自分の楽曲の質の証明になる
- 多くの地域・メディアに曲を届けてもらえる
- アーティスト同士のつながりができる
といったメリットがあります。収益もある程度は期待できます。誰もがトップレーベルと契約したいと思うのは当然ですよね。
レーベルは必要ない?個人リリースとのバランス

結論から言うと、個人でのリリースとレーベルからのリリースを、バランスよく組み合わせるのがおすすめです。
第1回の「#1 音楽業界の仕組み」で解説したように、今はSpotifyやApple Musicなどのストリーミングサービスのおかげで、個人でも世界中に曲を届けられます。宣伝もSNSで完結できる時代です。そのため、「印税の多くを取られるレーベルは必要ない」という考え方も、海外の個人プロデューサーの間では広がっています。
上の記事では、配信代行サービスのLANDRが、レーベルが必要ない理由を説明しています。「ストリーミングの時代」「SNSで自分で宣伝できる時代」に、なぜレーベルが必要なのか、という論旨です。
これも正論ではありますが、私はレーベルは必ずしも悪ではないと考えています。私は以前、ある海外のレーベルと、売上の40%をレーベルが受け取る契約を結んだことがあります。しかし、まったく後悔しておらず、むしろ良かったと思っています。
一度レーベルと契約すると、その後の売り込みで「◯◯からリリースしています」と一言添えるだけで、採用率がかなり上がります。普通のビジネスのキャリアと同じ考え方です。音楽業界のトップにいる人ほど忙しいので、何か結果を出している人のメールを優先して読みます。
個人でリリースする方法は、「#4 個人で曲を配信する方法」で解説しています。
この記事の手順は FL Studio Template Pro に設定済みです。 詳細を見る →
STEP1:自分に合うレーベルを探す

最初に狙うべきなのは、トップレーベルではなく自分の今の実力と規模に合った小〜中規模のレーベルです。世の中にはレーベルが無数にあります。ありがちなのが、いきなりSpinnin’やMonstercatにデモを送って、相手にされずに終わるパターンです。トップレーベルには世界中から大量のデモが届くので、すでに結果を出しているか、よほど才能のあるアーティストでないと難しいのが現実です。
そこで、次の3ステップを地道に繰り返しましょう。
- 小さめのレーベルで曲を出す
- 少しずつファンを増やす
- 前回より大きいレーベルで曲を出す
この流れを続けていけば、ゼロから始めても、数年後には想像していなかったところまで成長できるはずです。
レーベルの探し方
レーベル探しには、次のようなサービスが便利です。
| サービス | 特徴 |
|---|---|
| LabelsBase | レーベルのデータベース。ジャンルやデモの受付方法を調べられる |
| LabelRadar | 電子音楽向けのデモ提出プラットフォーム(Beatport傘下)。多くのレーベルがここでデモを受け付けている |
| SubmitHub | レーベル、ブログ、プレイリストのキュレーターに曲を送れるサービス |
これらで、
- 扱っている主なジャンル
- SoundCloudやSpotify、YouTubeのフォロワー数
が自分に合っているレーベルをすべてメモしておきます。各サービスの料金や利用条件は変わることがあるので、公式サイトで確認してください。
裏技:好きな曲の℗表記からレーベルを探す
Spotifyで、自分とジャンルが近いアーティストの曲の©℗表記を調べる方法もあります。

℗の行に隠れたレーベルを発見
上の画像のいちばん下の小さな文章を見てください。「℗2018 bitbird under〜(略)」と書いてあります。これは、San Holoが立ち上げたbitbirdというレーベルから出た曲だということです。好きなアーティストがいたら℗の行もチェックしてみましょう。出てきた名前をGoogleで検索して、レーベルの公式サイトが見つかればこっちのものです。
STEP2:送り先は1〜3社に絞る

一斉送信は絶対ダメ
候補がたくさん見つかっても、すべてのレーベルにCCでメールを一斉送信してはいけません。クラス全員に告白メールを一斉送信するようなもので、相手にとても失礼ですし、採用されることはまずありません。
できれば1社、多くても3社に絞り、1通ずつ誠実に丁寧に書きましょう。レーベルの公式サイトやSoundCloudには、たいてい「Demo Submission」や「Demos」という項目があります。最近は、メールではなくLabelRadarや専用フォームでの提出を指定しているレーベルも多いので、必ずそのレーベルが指定する方法で送りましょう。
STEP3:デモを送る英文メールの書き方

帰国子女の方も、英語にまったく自信がない学生の方も、メールの型は同じです。次の7つのポイントを順番に押さえましょう。
1. 件名
件名はとても大事です。「Hello.」や曲名だけの件名はNGです。相手はビジネスとしてデモを聴いているので、意味のわからない件名だとその時点で開いてもらえません。
用件は「Demo Submission」なので、この言葉は必ず入れましょう。ただ、それだけだと大量の似たようなメールに埋もれてしまいます。「(アーティスト名) – (曲名) Demo Submission」のような形なら合格ラインです。用件を簡潔に伝えつつ、ほかより一段目立つ件名を工夫してみてください。
2. 書き出し
できれば担当者の名前を調べて「Hi ◯◯,」と呼びかけましょう。名前がわからなければ「Hi ◯◯ Recordings,」でも大丈夫です。相手の時間を奪わないよう、あいさつは短くすっきりと。
3. 本文(自己紹介)
まずは名前と拠点を伝えます。「My name is ◯◯, a music producer based in Japan.」のようなシンプルな形で十分です。都市名(TokyoやKyotoなど)は、付加価値になりそうなら入れましょう。年齢・職業・性別などは必要ありません。
続けて、相手に関係のあることや、相手が驚く情報を簡単に伝えます。たとえば「I have released music on (以前リリースしたレーベル名).」「My latest track has over (大きな数) streams on Spotify.」などです。「この人はすごいかも」と興味を持ってもらい、デモを再生してもらうのが目的です。
4. 曲のファイルは絶対に添付しない
デモの曲データをメールに添付してはいけません。ウイルスの可能性を警戒されるので、添付ファイルはまず開いてもらえません。正解は、
- SoundCloudのプライベートリンク(シークレットリンク)を1曲分だけ送る
ことです。

SoundCloudでは、曲を非公開にしたまま、リンクを知っている人だけに聴いてもらえます。曲の「Share」ボタンからシークレットリンクを取得して送りましょう(参考:プライベートトラックの共有方法)。相手が曲をダウンロードできるように、編集画面の「Permissions」タブで「Enable Downloads」をオンにしておくとなお良いです(参考:ダウンロードを有効にする方法)。無料プランでは1曲あたりのダウンロード回数に上限があるので、その点も覚えておきましょう。
「Here is a private SoundCloud link with downloads enabled: ◯◯」と書けば完璧です。当然ですが、送るのはどことも契約していない、未発表の曲1曲だけです。
簡単な曲の紹介を添えると、さらに良くなります。
- BPMは?
- ジャンルは?
- 未発表で、どことも契約していないか?
この3点を盛り込めばOKです。たとえば「I have a brand new unsigned track that I would like to release on your label. It is titled “(曲名).” It is a (BPM) BPM (ジャンル) track with (曲の雰囲気).」のような形です。
5. お礼のあいさつ
最後に、必ずお礼のあいさつと自分の名前(First Name)を入れましょう。「Thank you for your time. Best regards, (自分の名前)」などです。
6. 関連リンク
Instagram、X(旧Twitter)、SoundCloud、SpotifyなどのSNSがあれば、リンクをまとめてメールのいちばん下に書いておきましょう。SNSの整え方は「#6 SNSの攻略法」で解説しています。
7. 完成例(コピーは禁止)
ここまでの内容を、完成例としてまとめました。ただし、みなさんがこの文章をそのままコピーすると、私のメールがスパムと勘違いされてしまいます。文章はコピーせず、自分の言葉で書いてください。ご協力をお願いします。

メール本文:完成例
英語が苦手でも大丈夫?必要な英語力とAI翻訳の使い方
海外レーベルとのやり取りに必要なのは、ネイティブ並みの英語ではなく、短いビジネスメールを正確に読み書きできる力です。音楽の専門用語を除けば、使う単語はほとんどが簡単なものです。
英語を使う場面は、主に次の3つです。
- レーベルやマネージャー(A&R)との連絡…デモ提出のメール、リリース日程の相談、ときにはオンライン通話でのやり取り
- ファンとの交流…YouTubeやSoundCloudのコメントへの返信。短いお礼なら簡単な英語で十分です
- 制作の勉強…「How to make 〜」で検索すると、英語の解説動画や記事がたくさん見つかります
今はDeepLなどの翻訳サービスや、ChatGPTのような生成AIを使えば、英文メールの下書きを短時間で作れます。上手に使うコツは次のとおりです。
- 日本語で要点を箇条書きにしてから翻訳させる…長い日本語の文章をそのまま訳すより、自然な英文になりやすいです。
- 「短く、丁寧なビジネスメールに」と指示する…レーベル宛てのメールは短いほど読んでもらえます。
- 出てきた英文は必ず自分で読み直す…曲名、BPM、リンク、相手の名前の間違いはAIでは気づけません。意味がわからない表現は使わないようにしましょう。
- テンプレートの使い回しに注意…AIで作った定型文をそのまま大量に送ると、ほかの人のメールと似てしまい、スパムに見えやすくなります。相手ごとに一言、そのレーベルを選んだ理由を加えましょう。
ただし、契約書の内容(印税の割合、権利の期間、地域など)は、機械翻訳だけで判断しないでください。不安な点は、英語のわかる人や専門家に確認してから署名するのが安全です。
よくある質問
デモを送ったのに返事が来ません。催促してもいいですか?
多くのレーベルは、採用する場合のみ返信するスタイルです。デモ提出の案内に返信期間が書かれていれば、それを過ぎるまでは待ちましょう。催促するなら1回だけ、短く丁寧に送るのがマナーです。
同じ曲を複数のレーベルに同時に送ってもいいですか?
一斉送信はNGです。複数社に送る場合も1通ずつ個別に送り、どこかと契約が決まったら、ほかのレーベルにはすぐに取り下げの連絡を入れましょう。
どのくらいの完成度で送ればいいですか?
「そのまま配信できる」レベルまで、ミックスとマスタリングを仕上げてから送りましょう。最初の数十秒で判断されることも多いので、イントロが長すぎる場合は聴きどころから始まるように工夫するのもひとつの手です。仕上げ方は「マスタリングの6手順」で解説しています。
まとめ
- トップレーベルを狙う前に、自分に合う小〜中規模のレーベルから実績を積む
- レーベル探しにはLabelsBase・LabelRadar・SubmitHub、℗表記のチェックが便利
- 送り先は1〜3社に絞り、指定された方法で、未発表曲1曲だけを送る(ファイルの添付はNG)
これらを参考に、みなさんがレーベルと契約できるとうれしいです。次は「#5 ロゴやジャケット画像を作る方法」や「#7 Spotifyの攻略法」も読んでみてください。それではまた、次回の記事でお会いしましょう。Happy Producing<3

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